施設運用後のトラブルは「設計段階」の配慮で決まる

老人ホームや介護施設を運営する中で、入居者様からの日々のクレーム対応や、退去につながる不満の解消に頭を悩ませていませんか?
実は、施設運用開始後に発生するトラブルの多くは、事前の「設計段階」におけるちょっとした配慮の欠如から生まれています。
今回は、数多くの老人ホーム設計を手掛けてきた大岡成光建築事務所の視点から、入居者様の満足度を高め、同時にコストの合理化やスタッフの負担軽減にもつながる「居室設計の細やかな工夫」について解説します。
居室は同じ向きに並べない!「リバース配置(左右反転)」の重要性

居室を設計する際、まったく同じレイアウトの部屋を同じ向きでズラリと並べてしまうケースが見受けられますが、当事務所では基本的に居室を「左右反転(リバース配置)」で組み合わせる設計を推奨しています。
これには大きく2つの理由があります。 一つ目は「バリアフリーの視点」です。
入居者様の中には、右半身、あるいは左半身が不自由な方がいらっしゃいます。
すべての居室が同じ向きだと、手すりの位置や水回りの配置が片方の症状の方にしか合わなくなってしまいます。
左右反転の部屋を設けることで、入居者様それぞれの身体状況に合わせた適切なお部屋へのご案内が可能になります。
二つ目は「施工の合理化とコストダウン」です。
水回りを背中合わせに配置することで、給排水の配管スペース(PS)を隣室のPSと隣り合わせにまとめることができます。
これにより配管工事の施工性が大きく向上して手間が省けるため、結果として建築コストを抑えることにつながります。
クレームを未然に防ぐ!空調・換気設備の「風当て」対策

施設運営において、非常に多いのが「部屋が暑い」「エアコンの風が冷たい」といった空調に関するクレームです。
これを防ぐためには、ベッドの真上や直接風が当たる位置にエアコンを設置しないことが鉄則です。
また、見落としがちですが、外気を取り込む「給気口」も同様です。
冬場に冷たい外気が直接ベッドに降り注がないよう、ベッドの対角や反対側の壁面に空調設備をレイアウトする必要があります。
さらに、エアコンの室外機置場にも工夫が必要です。
各居室のバルコニーに無計画に室外機を平置きしてしまうと、せっかくのスペースが室外機だらけになってしまいます。
設計段階から「2段積み架台」を計画し、バルコニーのスペースを有効活用することで、メンテナンス性も向上します。

車椅子でも使いやすい「扉と鍵」「トイレ」のユニバーサルデザイン
日々の生活で何度も使う扉やトイレの設計は、入居者様の自立支援に直結します。
■ 扉と鍵の高さ
車椅子をご利用の方でも無理なく操作できるよう、居室の引き戸の鍵は「床から65cm」の位置に設定し、そのすぐ上にバーハンドル(縦長の取っ手)を設置するのがベストなバランスです。
この高さであれば、車椅子の方でも歩行できる方でも、どちらもストレスなく操作が可能です。

■ トイレの洗浄ボタン
コスト削減のために、トイレの壁面に設置するリモコンボタンを省略してしまうケースがありますが、これは絶対に避けるべきです。
身体の不自由な方にとって、便器の後ろにあるタンクのレバーに手を伸ばして水を流す動作は非常に困難です。
多機能なリモコンである必要はありません。壁面にシンプルな「流すだけ」のボタンを必ず設置することが、入居者様の尊厳を守り、スタッフの介助負担を減らすことにつながります。

運営方針に合わせた事前の設備計画
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最後に、施設の「コンセプト」や「運営方針」に関わる事前計画のポイントです。
これらは工事が始まってからでは変更が難しいため、設計の初期段階でしっかりと方針を固めておく必要があります。
■ ナースコールの廊下表示灯

居室からの呼び出しを知らせる廊下のランプ(表示灯)は、どうしても「病院っぽさ」が出てしまいます。
近年は「あくまでご自宅としての居住空間」をコンセプトにし、あえて廊下の表示灯をなくす(スタッフの携帯端末等で管理する)施設も増えています。
どのような空間づくりを目指すかによって、設計が変わってきます。
■ 電気・水道の「子メーター」設置

各居室の光熱費を「毎月定額制」にするのか、それとも「実費精算(使った分だけ請求)」にするのか、運営方針は決まっていますか?
実費精算にする場合は、各部屋に子メーターを設置する配線・配管計画が初期段階から必要になります。
まとめ

老人ホームの居室設計は、ただ必要な設備を詰め込めばよいというものではありません。
「入居者様がどう動くか」「どうすれば不快感を取り除けるか」を徹底的にシミュレーションし、数cm単位での調整や設備の取捨選択を行うことが、最終的な「入居率の高さ」と「満床が続く施設づくり」に直結します。
老人ホーム・介護施設の建築・設計をご検討のオーナー様は、豊富な実績と独自のノウハウを持つ大岡成光建築事務所へぜひ一度ご相談ください。













